教育・イベント

令和3年度 公開森林実習

2022年03月19日

今年も残念ながら対面では無理だったのですがオンラインでは実施できました。当初7名の希望者の内,オンラインに切り替えた後でも5名の他大学の学生が受講してくれました。1日目はあらかじめ送付した葉サンプルを用いて同定の実習を行いました。常緑広葉樹だからこそ可能な方法です。チャットで種名を正確に伝えられるのは利点です。一方あえてサンプルは個体識別せずに送付したので,そのサンプルが本当に今,説明されているその種なのかは分かりにくいものもあったようです。

2日目の午前中は事前に撮影した綾の照葉樹林の画像をみてもらいました。ただ見ているだけだと,ふーん,で終わってしまいます。そこで毎木調査をしている動画を撮影し,動画で読み上げられる測定値は各自記録してもらい,後のレポートのためのデータとしました。

午後は,田野フィールド内のモニ1000サイトから,zoomアプリをインストールしたスマホを使ってライブ中継紹介をしました。携帯回線がほぼ全域で使える田野フィールドの利点です。ただし回線状況が良くてもzoomのシステムを通すときにコマ落ちするようです。谷底などで回線状況が悪くなるとさらにひどくなります。

3日目はオビスギの古い造林地である三ツ岩林木遺伝資源保存林の紹介と,田野フィールド内の古いヨシノスギ林分のライブ中継をしました。午後は綾と田野の照葉樹林に関するレポートを作成してもらいました。

言葉や資料で伝える内容自体は対面でもオンラインでも変わりないので情報量としてはオンラインでも劣りはしないはずですが,言うまでも無く「実」体験ではないので,「実」習としての成果の評価は難しいのかもしれません。

以下,受講生の感想文(原文ママ)です。

Aさん:普段いる京都では古い照葉樹林はまだ少なく、照葉樹については知らないものだらけの状態であった。そのため1日目の樹種同定は私にとって目新しい樹種ばかりで好奇心をくすぐられた。オンラインで実地を見られないのでなおさら実際に生えている様子を見てみたいという思いが強くなった。
Zoom越しで樹種同定をするのはなかなか難しいことであった。口頭で特徴を述べられてもそれが実際の枝葉でどう見えるのかイメージするのが難しく、なかなか根気のいる時間のかかることであった。あらかじめ枝をスキャンしておいて、Zoomの画面共有でそれを見せながら解説するという方法を取れば幾分良くなるのではないかと思う。
ライブ中継で山を見学するのは、正直なところあまり面白くなかった。通信の影響で荒くなった映像をずっと見続けるのはそれだけで疲れるし、いまいち向こうの様子もわかりにくい。毎木調査の録画映像は比較的見やすかったのでそちらの方がマシではないかと思う。
何につけてもオンラインだと面白さは激減する上に不便なことだらけであるから、実地開催を強行してもらいたかったというのが本音である。

Bさん:オンラインでの樹種同定は難しかったですが、画面では伝わり切らないのを言葉で伝えようとして、言語化された、人のフィルターを通してみた情報が得られたのが面白かったです。自分も質問するためにサンプルをよく観察した気がします。

Cさん:実習に参加させていただきありがとうございました。今回はオンラインによる開催でしたが、実物の照葉樹の枝葉を使って樹木図鑑を作成できたのはとても楽しかったです。写真や映像だけでなく、感触や色を感じることができたことでより樹木の特徴を知ることができました。また、関東ではまず見ることのない種類の樹木の枝葉を見れたのはとても貴重な体験でした。
皆さんのレポートや樹木図鑑にはとても刺激を受け、同じ課題でもそれぞれ個性が出ていて面白いなと思いました。
リアルタイムで演習林の中を歩く映像を見たのは新鮮で面白かったです。演習林の今の状態や、道の険しさなどが伝わってきました。
今回は動画でも見ることはなかったですが、シイタケの駒打ちや林業機械の運転実習は全国の森林実習でも珍しく、来年度対面で開催されるならば是非参加してみたいです。

Dさん:コロナ感染状況で現地に行けない中、照葉樹林を本当の実習に近い形で学ぶ貴重な機会になりました。照葉樹林の本物の葉に触れながら種ごとの特徴を学び同定することが出来たこと、先生が森の中を観察する様子をライブで見ることで林内の様子を感じられたことが、普段の講義ではできない体験であり、興味深く学ぶことが出来たと感じました。仮説を立て、得られたデータから多様性指数を算出し、考察する発表では、研究に近い形で行えたことで勉強のモチベーションが向上したことに加え、責任感を持って取り組む姿勢を持てました。各学生の考えを聞くことで、異なる意見・視点があることに気づき、良い刺激になりました。これからの森林実習に際しては、葉の同定をする際に、葉の特徴をよりわかりやすく言語化して述べていただくと、同定のスピードが上がるのではないかと思いました。また葉の特徴が類似するものも、せっかく標本があるので比較しながら学ぶことが出来たらよかったのではと思いました。最後に、ご講義する上での準備も含め、貴重な学びをさせていただいたこと、感謝申し上げます。

Eさん:今回の公開森林実習は、現地宮崎県にて対面の予定が、コロナ蔓延の影響でオンライン開催となりました。
どのように演習内容を行うのか不安だったのですが、講義の前日に同定用の小枝が、60種以上届きました。事前準備の労力を考えると感動を覚えます。本当にありがとうございました。見慣れていない照葉樹の同定は大変だったものの、同定のポイントを種ごとに丁寧に教えていただき、今後照葉樹林で活かせる知識を多く得ることができました。他にも田野の演習林やスギ林の様子を歩きながらオンラインで説明しながら、常緑樹やスギ人工林の学修を行いました。樹齢の違いにより日射や樹種構成が変化している照葉樹林の様子は、非常におもしろいと感じました。講義を一貫して、自分の大学とは異なる森林について触れられる講義でした。受講して良かったです。開講していただきありがとうございました。

 

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