研究

六演習林試験地の論文

2020年06月03日

六演習林試験地というのは今から約50年前に,九州大学造林学教室の主導によりスギの品種試験地が九州内プラス愛媛県の6つの演習林に設置されたものです。九州大学糟屋演習林,同椎葉演習林,鹿児島大学高隈演習林,宮崎大学田野演習林,日田林工高校演習林および愛媛大学演習林です。このたび,50年目にしてこの成果をまとめた論文が発表されました。

Regional and topographic growth variation among 45-year-old clonal plantations of Cryptomeria japonica: effects of genotype and phenotypic plasticity. Journal of Forest Research. Tsutomu Enoki, Masahiro Takagi, Shin Ugawa, Eri Nabeshima & Hiroaki Ishii. https://doi.org/10.1080/13416979.2020.1767267

スギもトマトなどと同様に「品種」があります。品種によって,成長や,材質や,耐病性が異なると言われています。ただし樹木の場合成長するのに時間がかかるので,これらの遺伝に持っている特徴を確かめるのには時間がかかります。また管理されて均一な状態で生育させる野菜と違って,樹木は地形や気候が異なる山で育てられるので,これらの遺伝的特徴より生育条件の方が成長に強く影響する可能性も考えられます。この研究は,著者らが生まれた当初に始められたプロジェクトを,おそらく始めた人たちが始めた時の年齢になって,ようやく成果としてまとめられたものです。その結果,品種の間の違い(6品種)は成長のよい試験地で大きくなり,生育条件に対応して変化しやすい品種が成長がよいことがわかりました。成長がよい品種はどんな生育条件でもちゃんと大きくなれると言うことです。今後,地球環境の避けられない変化に対して,生育条件に対応して変化しやすい品種が,うまく対応していきやすいと考えられます。

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