研究

地球温暖化先取り実験:土壌呼吸編

2017年01月27日

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地球温暖化の原因は大気中の二酸化炭素濃度が高くなっているからと言われています。森林は大気中の二酸化炭素を吸収して大きくなっています(=光合成)。ということで森林は地球温暖化の防止に役に立っていると言われています。ですが森林は二酸化炭素を吸収しているだけではありません。はき出してもいます(=呼吸)。森林は植物と動物の菌類の集まりですが,生き物は生きている限り呼吸して二酸化炭素をはき出します。すなわち森林が二酸化炭素を吸収している(=シンク・吸収源)と言うことは,はき出す量より吸収する量の方が多いからです。

土の表面からは二酸化炭素がわき出ています。土壌呼吸と言います。でも土が生きているわけではありません。土の中にいる生き物の呼吸のせいで土の中の二酸化炭素の濃度が高いです。それが土の表面から湧き出て,濃度の低い大気の方へと移動しています(=拡散)。大気中の二酸化炭素濃度は約400ppmで,土壌中の濃度は2000~3000ppm程度です。

ところで,呼吸は温度が高くなると必ず増えます。そうしたらこれから先,温暖化して温度が高くなったら,土壌から出る二酸化炭素の量はどうなるでしょう。ほぼ必ず増えます。一方で,吸収する方の光合成は温度が高くなるとどうなるでしょう。こちらも温度が高いと増えますが,高くなりすぎると減ります。ということは,これから先本当に温暖化が進むと,呼吸は必ず増えるけど光合成はそうでもない。すなわちいつの日か今とは逆に,森林からはき出る二酸化炭素の量の方が,吸収する量より多くなってしまうかもしれません(=ソース・放出源)。森林が地球温暖化を早めてしまうと言うことです。

それはいつのことでしょう。それを知るための研究が写真の実験です。こたつヒーターで土を暖めます。地球温暖化の先取りです。そうして土壌呼吸を測ります。6年間測りました。その結果,土の温度が1℃高くなると土壌呼吸は1割増えることが分かりました。将来,森林が二酸化炭素を吸収してくれなくなってから,しなくなっちゃったねー,では遅いです。そうならないために,こうゆう研究が役に立っています。

この研究は国立環境研究所との共同研究です。2016年11月21日読売新聞夕刊,「子供の科学」2017年2月号, 80巻2号:6で紹介されています。

Sustained acceleration of soil carbon decomposition observed in a 6-year warming experiment in a warm-temperate forest in southern Japan,
Munemasa Teramoto, Naishen Liang, Masahiro Takagi, Jiye Zeng, John Grace, Scientific Reports (2016) doi:10.1038/srep35563

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